黒い雨   2 comments

と言う小説があるのをご存知でしょうか?
今となっては遠い昔とも言える太平洋戦争末期、日本の広島県広島市に投下された原爆をモチーフとした小説の事です。
主人公の女性は原爆による一時被曝を免れたものの、放射性降下物を含んだ「黒い雨」によって被曝してしまい、十数年後やっと決まった縁談話を前に・・・というとんでもなく救いのない話でした。
広島にも風評被害はありました。
原爆の閃光を「ピカ」と呼び、戦争の被害者にも拘らず「ピカの毒が移る」とか火傷の痕を指して「ケロイド」などと呼ばれて迫害されたのです。福島の原発と違い、原爆による放射線被曝はケタ違いです。「被曝」などと言う生易しいものではなかったはずです。閃光を見たものは放射線に貫かれ、熱線によって焼かれ、爆風によって粉々になってしまいました。そして、広島は人の住めない町になるといわれたのです。
現在どうでしょう?
広島は目覚しい復興を遂げ、その暗い歴史に真正面から向き合い発展してきました。
福島も同じです。いずれは、長い年月がかかろうとも復活できるのです。
それから半世紀以上が経ちました。
科学技術も人々の知性も大いに進化して豊かな生活が送れるようになりました。
ですが、人々の心は未だに50年前のままだということが残念でなりません。
東京電力や政府の姿勢は厳しく糾弾されなくてはなりません。
原発を誘致したんだからそれぐらい覚悟はあったんだろうと批難する人もいます。事実、福島県の行政も自治体の電力交付金を巡る馴れ合い体質も結局は住民が選択した結果だろうといわれればそこまでです。
ですが、一夜にして全ての財産を失い原発が出来るより前から先祖代々受け継がれてきた土地すらも捨てなければならなかった住民に何の瑕疵があったと言うのでしょうか。
放射線も放射性物質も、正しい知識さえあれば全く問題にはなりません。
むしろ時にその存在は有益なことでさえあります。
現在のヒステリックな反応はそのまま原子力を巡る無知と無理解の裏返しから来る恐怖そのものだといえます。心無い人の流言が人々の恐怖心を煽り、その煽りを恐れた人々がさらに心無い行動をとる。
実に、実に心の貧しい人間性だと思いませんか。
病気にも拘らず放射性物質による汚染は無いとの証明書がないと病院すら受診できない。汚染地域でもないのに根拠が無く同じ自治体にいたと言うだけで排斥しようとする。
半世紀にもわたる東洋の奇跡とも呼ばれた経済復興が産み出した日本人とはこんなバカげた人種だったのかと戦慄すら覚えます。
僕の住む相馬市は避難地域でも、屋内退避指定地域でもありません。
でも、町のあちこちで放射線が常に計測され、高々数μSvの数値にああだこうだとおおさわぎしています。
隣町に至っては行政の職員は真っ白な防護服に身を包み、住民をまるで病原菌のように扱っています。
あんな薄っぺらな防護服では内部被爆を避けるのがせいぜい。仕事が終わればそれを脱いで放射性物質が降り注いでいる(かもしれない)宿舎なり家なりに戻るわけです。全く意味が無いと思うんですがどうでしょう?
むしろ原発の逆で家はエアロックと除線用の水洗装置を完備して完全に密閉し、HEPAフィルター付きの換気装置で空気を取り込み、生活用水を含む飲料水はRO膜でろ過して飲むぐらいのガッツが無ければ影響は避けられません。
多分それは裏を返せば「恐怖」なんだと思います。
頭で分かっていても目に見えない、味も無い、色も無い、感じることも出来ない物。そんな幽霊を彷彿とさせるような存在はこれ以上ないかもしれません。
それを克服しろと言う人がいても、無理です。
理屈を人並み以上に理解していると自負する僕だって正直怖い気持ちに変わりはありません。
「もしかしたら」
「まさか」
「どうしよう、怖い!」
誰だって同じなのです。
でも、それを同じだからといって他人に押し付けたら、誰も信じられなくなります。
猜疑心と言うのは自分が他人にやったから、自分がやられるかも、という危機意識の裏返しです。一度芽生えてしまえば絶対に取り払うことは出来ません。
他人を疑わなくては生きていけない人生。
そんなつまらない人生、僕はゴメンです。
福島県に住む人間だから言うのではありません。
「放射能怖い」を「困ったときはお互い様」と言い換えるだけで、自分の心も他人の心も大いに温めることができるんです。
そんな言葉一つで世界が変わる。
そういう強靭な心を持つ人間に、僕はなりたい。

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初物 による エネルギー, 自然災害, 人災 への投稿 (2011/04/16)

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黒い雨」への2件のフィードバック

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  1. 先日、他県の友達に会う用事がありました。
    思わず、福島県だと放射能いやじゃない?
    卑屈になってしまっている自分に気づきました。
    そんな事で人間の線引きしないよ。
    技術系の仕事をしているその方は、例えは違うかもしれないけど、そんなの気にするんだったら自分なんか電磁波やたら浴びてるから、と笑ってくれました。
    なんだかとてもうれしくて。
    福島ナンバーだというだけで車に落書きされたりジロジロ見られたり、悲しい事の多い毎日、さりげない優しい言葉に心和みました。

    こんな一言でかまわない。
    今の私達には、救いとなります。

    思いやりプラス
    強靭な心私も持ちたい。

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    今野時子
  2. つ[ウホッイイ彼氏。]

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